THERMAL ENVIRONMENT健康への影響が大きな
「温熱環境」

温熱環境とは?

温熱環境とは、温度や湿度の状態で表す建物内の環境のことをいいます。
近年の研究で、室内の温熱環境が、そこで暮らす人の健康に大きな影響を及ぼしていることが明らかになってきました。

この研究では、室内を一定の温度、湿度に保つことが居住者の健康に良い影響を及ぼすことや、低温の室内では、血圧の上昇や心電図の異常、睡眠途中の覚醒など、健康や生活のクオリティを低下させている事が分かりつつあります。

温熱環境は、健康に暮らすための非常に重要な要素なのです。

01

住まいの断熱化によって
健康は増進される

一年を通じて、室内を一定の温度、湿度に保つ温熱環境にすることが健康に暮らすための第一歩です。

その為には、住まいの断熱化が有効な手段となります。

ここでは、断熱化の目的である「一定の温熱環境」が、なぜ必要なのかについてお話しします。

01-01

欧州各国の冬季死亡増加率比較と
国内の冬季死亡増加率の都道府県比較

欧州各国の冬季死亡増加率比較
国内の冬季死亡増加率の都道府県比較

図1の欧州各国の冬季死亡増加率を示すデータでは、フィンランドなどの寒冷な国が10%であるのに対し、比較的温暖なポルトガルやイギリス、イタリアといった国では20%前後に上昇していることが分かります。

この原因は、温暖な国の住宅では、断熱性能の良い住宅があまり普及しておらず冬季の室内温度が低い住宅が多いことだといわれています。

一方、図2の国内の都道府県で比較した冬季死亡増加率を見ると、寒冷地である北海道が10%であるのに対し、それよりも温暖な地域である栃木県が25%と、
2.5倍の数値である事が分かります。これは、図1のグラフと同じ傾向で、断熱住宅の普及が進む寒い北海道の方が低い数値を示しています。

01-02

国内の断熱住宅普及率と
冬季死亡増加率は関連している

上記の傾向に断熱住宅の普及率を合わせて見ると、断熱住宅の普及率が高くなると死亡増加率が下がっていることが分かります。

断熱普及率と冬季死亡増加率

冬季死亡増加率
断熱住宅普及率
断熱普及率と冬季死亡増加率

日本においても欧州と同様の傾向が認められ、断熱性能の良い住宅が普及している北海道などの冬季死亡増加率が少なくなっています。

住宅の断熱化による効果により、冬の暖房した室内の熱が屋外に逃げにくくなり、
一定の温熱環境を長時間保てます。

冬場での温かい室内での暮らしは、身体への負担を軽減し、死亡増加率にも顕著に表れているのです。
これらの事が、住宅で健康に過ごすためには、室内を一定の温熱環境に保つことが必要な理由です。

02

断熱の良い住宅がもたらす
健康への様々な効果

2019年に発表された「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査」の結果として、以下のことが報告されました。

国による住宅の断熱化と健康との関係の調査から、断熱の良い住宅が様々な面で健康へもたらす効果が明らかになってきました。

02-01

血圧への影響

室温が低いほど血圧が高く(表1)、その影響は高齢者ほど大きいことが、より明確になってきました。 また、これらは、住宅を断熱改修することで改善する(表2)ことも確認されています。 また、安定した室温であれば血圧の季節差が小さくなる(表1)こと、部屋間の温度差や床に近い場所の室温が血圧に影響していることも明らかになってきました。(表3、4)

表1:血圧の季節変動性(室温安定群・不安定郡の比較)

表1:血圧の季節変動性(室温安定群・不安定郡の比較)

表2:断熱改修による起床時・就寝時の血圧低下効果を検証

表2:断熱改修による起床時・就寝時の血圧低下効果を検証

表3:起床時の寝室と居間室温の関係

表3:起床時の寝室と居間室温の関係

表4:血圧に対する床上1m床近傍室温の影響

表4:血圧に対する床上1m床近傍室温の影響

02-02

健康診断数値への影響

室温が低いほど、コレステロール値が高い(表5、6)、心電図の異常所見が多い(表6)などのことが、より明確になってきました。

表5:温暖住宅と寒冷住宅の居住者の血中脂質を比較

表5:温暖住宅と寒冷住宅の居住者の血中脂質を比較

表6:血中脂質・心電図異常と室温の関係

表6:血中脂質・心電図異常と室温の関係

02-03

睡眠の質改善

室温が低いほど夜間頻尿の度合いが高くなり、断熱改修などで室温が上昇するとその回数が減少する(表7)ことや、床に近い温度が高いほど、寝つきが良くなることが確かめられました。(表8)

表7:断熱改修の有無と室温の変化による過活動膀胱(夜間頻尿)の変化

表7:断熱改修の有無と室温の変化による過活動膀胱(夜間頻尿)の変化

表8:入眠と室温の関係

表8:入眠と室温の関係

02-04

入浴習慣とヒートショック

室温の低い住宅では、熱めの温度で長く入浴している家庭が多い(表9)ことが分かりました。
これは、短時間に低温と高温の状態を繰り返すことになり、ヒートショックによって様々な疾病を起こしたり浴槽内で失神して溺死してしまうなどのリスクを高めます。

表9:居間・脱衣所室温と入浴習慣の断熱改修前後比較

表5:居間・脱衣所室温と入浴習慣の断熱改修前後比較

02-05

疾病

床に近い場所の室温が低い住宅では、様々な疾病や病状を持つ人が多いことが明確になってきました。

高血圧と上下温度差

高血圧と上下温度差

脂質異常症と上下温度差

脂質異常症と上下温度差

糖尿病と上下温度差

糖尿病と上下温度差

また、室温に関わらず、相対湿度が低い部屋ほど体調に関わる症状が多いことが分かりました。

アレルギー性鼻炎と寝室湿温度(断熱改修前)

アレルギー性鼻炎と寝室湿温度(断熱改修前)

アレルギー性鼻炎と居間湿温度(断熱改修後)

アレルギー性鼻炎と居間湿温度(断熱改修後)

02-06

身体活動量

断熱性の低い住宅を断熱改修すると、住宅内での活動量がそれまでよりも増加することが分かりました。

身体活動量

これらの調査結果から、住宅で人が健康に暮らして行くためには、室内の温熱環境が欠かせない要素であることが明確です。

温熱環境を改善するには、住宅の断熱性能を上げ、建物の熱の出入りを防ぐことが最も有効ですが、

現在も、日本の住宅に求める断熱性能は先進諸国の中で最も基準が低く、遅れています。